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農業の危機!食い荒らされる農作物 ~鳥獣から農作物を守ろう~
こんにちは!はだ農園です。
お盆も過ぎて少し暑さも和らいできました(^^)vここからは年末にかけてみかんの季節となるので気を引き締めていきたいところです。
さて今回は『農業の鳥獣被害について』お話ししてみようと思います。ここ10数年鳥獣害の被害は深刻なものがあります。地域や作物によって鳥獣の種類は異なりますが、全国各地ほとんどの農家が困っているのが現状です。
しかし一体どのぐらいの被害が出ていて、どのぐらいの頭数がいるのかお分かりでしょうか?また、それがここ10数年でどう推移しているかも気になる所ですよね。ですので、しっかり数字として皆さんにお伝えできればと思っています。それを踏まえた上で、特に農業に害を与えている鳥獣やその対策なども紹介したいと思いますのでよろしくお願いします。
それでは参りましょう。
データから見る鳥獣被害
鳥獣の性質や対策、国の方針などを説明する前に、まずは数字(データ)から見てみましょう。その方がより具体的に想像できると思います。また数字で見ることによって新しい見方もできるはずです。
国としては環境省と農林水産省が共同でH25(2013)に『抜本的な鳥獣捕獲強化対策』と題して2023までの10年間で鹿やイノシシの生息数を半減させるという目標を立てました。もうすぐその期日を迎えようとしています。そこも合わせて見て頂くと鳥獣害対策がうまく進んでいるのかの1つの指標となると思います。
鳥獣による農作物被害額
H22(2010)239億円 H23 226億円 H24 230億円 H25(2013)199億円 H26 191億円 H27 176億円 H28 172億円 H29 164億円 H30 158億円 R1(2019) 158億円
データから見ると被害額は下降しています。これだけ見ればいい傾向に見えるんですが、実際、農家が現場レベルで感じているものとは少し違う気がします。H24~H26当たりは鳥獣害対策として国からも手厚い支援が出ていました。そのため行政に被害を報告する農家さんも多かったです。また、農家さんも躍起になってなんとかしようと動き始めたのがこの頃です。ただ、現状では対策をとってもうまくいかないことも多く農家さんと鳥獣害の『いたちごっこ』の状態が続いています。私個人の感想としては年々被害は悪化しているように思います。
ほんとなら被害額というようなお金ではなく量で算出される方が正確な気もするのですが、そこは食料自給率や他のデータとの兼ね合いもあるんでしょうね。
鳥獣害の被害割合としてはおよそ、鹿・イノシシが63%、鳥類が20%、サルが5%、獣類(鹿・イノシシ・サル以外)が12%とされています。
農作物産出額
被害額と合わせて農作物の産出額も見てみましょう。
H22(2010)8.1兆円 H23 8.2兆円 H24 8.5兆円 H25(2013)8.5兆円 H26 8.4兆円 H27 8.8兆円 H28 9.2兆円 H29 9.3兆円 H30 9.1兆円 R1(2019)8.9兆円
農作物の産出額は少し波はありますが緩やかな右肩上がりの傾向があります。これは高品質化や輸出が増えたのも要因の1つだと思います。あとは同じ面積でも品種や技術、テクノロジーによって収量が上がり反収益が増えたことも考えられます。
産出額の中での被害額の割合
産出額、被害額を見てきましたが、鳥獣被害を正確に表すために毎年の産出額のうち被害額がどのくらいあるのかを算出してみました。
H22(2010)0.29% H23 0.27% H24 0.27% H25(2013)0.23% H26 0.22% H27 0.2% H28 0.18% H29 0.17% H30 0.17% R1(2019)0.18%
データから見ると毎年着実に被害額が減っているのは分かりますね。ただ、思ったよりも減っていないようにも見えます。10年間で被害は2/3程度になっていますが、国や地域が試行錯誤してこの程度です。報告がないものを含めるともっと差は縮まるはずです。この先この数字が大幅に減少するのかと言われれば疑問に思うところがあります。
農地面積の推移
おまけとして、農地面積も調べてみました。
H22(2010)459万㏊ H23 456万㏊ H24 455万㏊ H25(2013)454万㏊ H26 452万㏊ H27(2015)450万㏊
単位が違うので計算はできませんが、見た感覚としては年々農地が減っている中で被害額も減っているとなると単純に農家が減ったから被害も減ったと言うことにもなるのかもしれません。
面積が減少している一方、産出額は増えているのでそういうことではないかもしれませんが鳥獣害は確実に離農の要因の1つとなっています。それほど鳥獣害とは被害金額以上に精神的ダメージと対策に手間がかかるものなんです。
鳥獣害の二大巨頭
鳥獣被害の二大巨頭と言えば、皆さんもよくご存じの『鹿とイノシシ』です。この2種で農作物被害の60%以上を占めています。私の地域では鹿は生息しておらずイノシシに毎年悩まされているので農業被害は圧倒的にイノシシが多くの割合を占めていると思っていましたが、調べてみると実際は鹿が1番被害を与えているようです。この2種について詳しく見てみましょう。

鹿・イノシシの個体数推移
H22(2010)225万頭、114万頭 H23 243万頭、98万頭 H24 260万頭、100万頭 H25(2013)275万頭、105万頭 H26 289万頭、113万頭 H27 270万頭、108万頭 H28 252万頭、98万頭 H29 244万頭、88万頭
少し分かりづらいかもしれませんが年ごとに鹿、イノシシの順で頭数を表しています。こうして見ると鹿の頭数が異常に多いのが分かります。また、イノシシがだいたい横ばいなのに対して鹿は増えているのが分かります。繁殖力はイノシシの方が高いので、鹿の頭数が増えている要因としては捕獲の難易度が高いからと言えるでしょう。
鹿・イノシシの捕獲数推移
H27(2015)113万頭 H28 120万頭 H29 117万頭 H30 118万頭 R1 122万頭 R2(2020)135万頭
比較的新しいデータとなりますが鹿とイノシシを合わせた捕獲数の推移を表したものです。鹿とイノシシの捕獲数の割合で言うと4:6ぐらいと思って頂いていいと思います。数字だけみると年間でなかなかの数を捕獲しているように思います。
さらに詳しく見るために3年分ではありますが、捕獲率の推移を表してみました。
H27 30% H28 34% H29 35%
1/3は捕獲できていて捕獲率も上がっています。ただ、個体数から見るとまだ捕獲数が十分でないことが分かります。さらに捕獲率を上げないと大幅な減少にはならないでしょう。
日本のハンター!猟友会
日本にも鳥獣害を狩猟するハンター組織があります。それが『猟友会』です。日本で唯一法律の下で動物を殺めることができる組織です。ジビエの流通で少しはその存在が知られることになりましたが組織の中身まではまだまだ一般的には知られていません。猟友会は何の目的で形成され、どういった役割を持つのでしょうか。

猟友会
猟友会とは特定の条件を見たした日本の狩猟者団体の統一名称のことを指します。つまり、日本での狩猟のエキスパート集団ということです。始まりは昭和14年(1939年)に大日本猟友会として発足しました。後に全国的な組織となり県ごとに県猟友会が発足され、さらに自治体ごとに猟友会支部があります。
捕獲された鹿やイノシシの多くは処分されますが、一部は『ジビエ』として市場に流通します。ジビエはフランス語が語源となっています。食材として捕獲された狩猟対象の野生の鳥獣、又はその他の肉のことを言います。鹿やイノシシはもちろんウサギ、鴨、熊など今では調理方法も確立され様々なジビエがあります。
しかし、ジビエの価値が高まり需要が増えてきてはいるのですが下処理の難しさからほとんどの個体は処分されています。
目的や役割とは
猟友会の存在意義(目的)は自然界の鳥獣の安定を保つことにあります。そのためにむやみやたらに狩猟するわけではなく、捕獲数の制限や繁殖期の禁猟(地区によって)などの決まりがあります。持続的な捕獲ができるように調整や制限があるわけです。
また猟友会の役割としては、上記とも重なるのですが生息過多による自然環境の破壊を防ぐために個体数の調整を行っています。また、人々の安全を守るための捕獲活動も行われています。近年、温暖化や土地開発により自然が少なくなってきました。それによって土地やエサを求めた鳥獣が住宅街へ侵入してくるといった人にとって危険なケースが増えてきました。
本来、人と鳥獣の間には自然という境界線があります。それを崩したのは人間側に多くの問題があります。鳥獣も好きで人間側へ来ているのではないのです。そう考えると世の中はほんとに人間に都合が良くて動物にとっては窮屈なものなんだと思ってしまいます。
入会方法
入会に至っては国が定める資格があり誰もすぐになれるものではありません。鳥獣と言っても狩猟して命を殺める仕事であり、警察官以外で唯一『銃』の所持を認められる職業でもあります。それ相応に国から厳しく管理される仕事となります。
入会するためにはまず、猟友会にコンタクトをとる必要があります。それは支部でも県でもいいですが身近なのは支部の猟友会だと思います。入会の意思を伝えると猟友会が手続きを代行してくれてスムーズに事が進みます。ちなみに申請の窓口は警察署となります。ただ、手続きだけで猟友会に入れるわけではなく、講習や教習をうけ一定の基準を満たした者に証明書が与えられます。更新期間は3年です。その後、猟友会に入り様々な活動を行えるようになります。
猟友会の中では4つの会員区分があり、上の2つには銃の所持が認められています。所持には『鉄砲所持許可』が必要であり、この許可書を持つとライフル銃、散弾銃、猟銃(ハーフライフル)、空気銃の4種類の銃が扱えるようになります。日本は1銃1許可制で銃1丁ごとに許可が必要となります。
大事な役割を果たしている猟友会ですが、会員数はここ30年で激減しピーク時の1/3となっています。しかも、その中の3/4が50歳以上という高齢化です。その理由は若い人の興味のなさや世の中の余裕のなさにあります。猟友会は基本、兼業であり本業にすることは難しいです。そのことから若い人から見るとデメリットが多いと捉えられるのでしょう。
代表的な鳥獣害の特性と対策
日本で農作物に被害を与える鳥獣の代表的なものが大きく分けて鹿・イノシシ・鳥となります。それぞれの特性と作物にどういう被害を与えるかをしっかりと理解して対策を立てましょう。ただ、現在でも悩まされている農家が多いということは対策しても完璧には防げないということなんですよね 。

鹿
日本にいる鹿は7種類とされており北海道では蝦夷鹿、本州では本州鹿、九州では九州鹿などがいます。その7種類の鹿を総称して『二ホンジカ』と呼ばれています。
生息地は日本全国の森で、森の中でも草地の場所を好んでいます。食性は草食で、雑草や稲、木の実、苗木、樹木の枝葉や皮を好んで食べます。中でもたちが悪いのが樹木の新芽や皮を食べることです。新芽を食べられると樹は成長できませんし実をつけることもできません。皮に至っては食べられると水分が上に上がらず樹が枯れます。それほど死活問題となっています。鹿は季節によって食べ物がなくなると群れで移動することもあります。鹿の中でも地方ごとで食べ物が変わったり、それによるものなのか環境によるのか分かりませんが大きさも様々です。体長は110~170㎝、体重は40~110㎏で動物の中では大型になります。
鹿の繁殖力は旺盛で放置すれば4年で2倍に増加すると言われています。ですので、ある一定の生息数を超えれば対処できないということになります。それだけは絶対に避けなければなりません。さらに動物界ではよくあることかもしれませんが鹿は一夫多妻なので、オスが減少したとしても繁殖力が衰えません。オスとメスの見分け方は角です。オスには角があり毎年生え替わります。
鹿の最大の特徴が俊敏力と跳躍力です。走る速度は時速60キロとも言われ、1.5mの柵をも飛び越えたとの例もあります。そうしたことから捕獲が困難で危険な獣害とされています。
対策としては畑の周りに柵や電柵を張る必要があります。柵は最低1.5m、電柵は最低三段は必要でしょう。畑の面積にもよりますが、どちらもけっこうな初期投資がかかります。しかも作物を守るだけで鹿の数を減らすという根本的な対策ではありません。また同じように守るという意味では音や光や匂いで追い払う方法もあります。ガス鉄砲や防獣ライト、匂いなんかでは狼の尿の匂いで寄せつけないという方法もあります。
ですが大事なのはそれと同時に捕獲するということです。現在足罠や銃で多くの鹿が捕獲されていますが実際、目標の捕獲数には至っていません。
イノシシ
イノシシは主に2種類で北海道、沖縄以外に生息する二ホンイノシシと琉球諸国に生息するリュウキュウイノシシがいます。他に最近増えてきたのがイノブタです。畜産の豚と交配し雑種で生まれた野生の種類です。イノブタの最大の特徴は繁殖力です。繁殖期があるイノシシと違いイノブタは年中繁殖できます。繁殖力はイノシシの5倍とも言われ、とても危惧されています。
イノシシの生息地は日本全域で、好んだ場所には巣を作ります。巣は少しくぼんだ場所に落ち葉や雑草を敷き詰めて作ります。出産期には草や木の枝で屋根を作るか背丈のある草の下などを利用します。近年農業離れが進み耕作放棄地が増え農地が荒れてイノシシのかっこうの住み場となっています。食性は雑食で稲、野菜、果実、爬虫類など何でも食べます。最近は農産物など栄養価の高いものを多く食べる影響で年に1度の出産が2度になったという例もあります。しかもイノシシは1度の出産で4~5頭を出産するのでその繁殖力は爆発的です。実際私も親イノシシが5匹のウリ防を引き連れて歩いているのを何度か見たことがあります。
体長は100~170cmで体重は80~190㎏とかなり大きいです。車とぶつかってもピンピンしていて逆に車が廃車になるということもよくある話です。警戒心がとても強くエサでおびき寄せてもなかなか罠にかかりませんが、1度そこが安全だと分かったら何度でも来て住みついてしまいます。
対策としては鹿と同様に柵や電柵、音や光や匂いでの対策となります。イノシシの特徴としては嗅覚にはとても優れており犬並みとも言われています。罠を仕掛ける際にもなるべく人間の匂いを残さないようにしなければいけません。また、イノシシの体毛はとても剛毛なので電柵であっても体毛からは電気が通じにくいと言われています。イノシシは体毛がない鼻の部分でエサを探したり、触れることによって周囲を感知したりするので電柵は鼻の高さを目安に低く設置しましょう。
しかしこれらも対策であって根本的な解決方法ではありません。イノシシの繫殖力からして捕獲し続けることが1番重要なことになります。
鳥類
鹿やイノシシと違って樹が痛んだり、枯れたりするという被害はないのですが鳥類も地味に嫌な存在です。カラス、スズメ、ムクドリ、ヒヨドリなどが主なところとなります。鳥獣害の被害でも鳥類は20%程を占めるのであなどれません。特に稲や果樹の被害が多いです。鳥類は群れで作物を荒らすことが多く1度食べ出したらなくなるまで留まるので多くの被害が生まれます。
対策としては鳥類は昼間に活動するので、ガス鉄砲やサイレン音や爆竹など音で追い払ったり太陽光に反射するテープやディスクなど視覚で警戒させる方法があります。鳥類の対策の問題として捕獲が難しいということと数が多すぎるということがあります。
罠や銃でとらえるにしても的が小さくて難しいでしょうし、そもそも数が数千万単位なので捕獲したところで焼け石に水です。鳥類に関しては守り一択だと思います。
まとめ
ここまで鳥獣について話してきましたがいかがでしたでしょうか。話し始めの時は国の政策が悪いとか捕獲数が足りてないと感じたかもしれませんが、猟友会の現状と鳥獣の特性を見るとそうとは言い切れないんじゃないでしょうか。お金をかけたり知恵を練ったりとあらゆる対策をとっても鳥獣は慣れてしまいます。ここ数十年そのイタチごっこが繰り返されてきました。だからといって農業を存続させるためにはこの問題を放置するわけにはいきません。
ただ、1つ言えるのは『捕獲』しないと数年で爆発的に増えてしまうし今までの努力が無駄になってしまうということです。いつか人工的なものなのかAIによるものなのか分かりませんが画期的な捕獲の道具、システムができるかもしれません。そうなれば鳥獣対策は大きく前進すると思います。ただそれまでは1頭ずつ地道に捕獲して数を増やさない努力をしなければいけません。
自分の畑は大丈夫とか誰かがやってくれるだろうと思わず現状の数と向き合い地域として鳥獣対策に取り組むべきです。農業は個人で作るものかもしれませんがそれは地域あってのものです。鳥獣に対して正しい知識を持ち多くの人と協力して農業さらには地域を守っていきましょう。
質問や感想がありましたら是非コメント欄へお願いします。
それでは、また。

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