はだ農園

針尾汐風みかん



植物の生命活動の維持 ~植物ホルモンを理解しよう~

こんにちは、はだ農園です。

6月に入り作業時間も長くなってきました。ブログの内容を考えるのも書くのも大変になってきましたがここ3か月で習慣となってきましたので少ない時間ですが少しずつ頑張れています(^^)v

さて今回は植物ホルモンについてお話ししたいと思います。植物はずっと昔から生存していたものですが植物内で生成される植物ホルモンについてはここ150年ぐらいの中で発見された、まだ歴史的には浅いものです。ですからまだ解明できていない部分もありますが、植物ホルモンが植物に与える影響は非常に大きいものがありますのでできるだけ分かりやすくご紹介していきと思います。

それでは参りましょう。

オーキシン

オーキシンは細胞の成長や肥大を促進したり、葉を正常に留めたり、発根に関与したりと元気の源となる植物ホルモンです。急で申し訳ないですがクラスで例えると『質問ある人?』と聞かれると何でも『ハイ!ハイ!ハーイ‼』と手を挙げる元気いっぱいの子です。伝わりましたか(笑)?それではその働きを見ていきましょう。

頂芽優勢

なんか聞いたことがある名前ですよね。それもそのはず、中学生ぐらいの生物の授業で学んでいることだと思います。簡単に説明すると名前の通り、植物は1番上の先端の芽が優先的に強く勢いがありますよという生理作用のことです。オーキシンはこの生理作用に深く関与しています。

オーキシンは頂芽で生成されます。詳しく言うと多くが頂芽で生成され植物体の新葉や新芽でも生成されています。新しく葉や芽を形成される場所なので細胞の成長や肥大の促進作用があるオーキシンがその場所で生成されているのもそのためです。

頂芽で生成されたオーキシンは下へ下へと下がっていきます。イメージとしては、スーっと落ちていくのではなく、いくつもの部屋を出入りして下に落ちていくイメージです。部屋の出口から出ていくときはATPも消費します。ちなみに部屋の出入り口は決まっているのでオーキシンは一方向にしか流れることができないようになっています。下に降りたオーキシンは地中まで到達し発根にも影響を与えます。オーキシンは生命力溢れる植物ホルモンなんです。

カルス層生成

カルス層とは道管と師管の間にある形成層が損傷することにより時間をかけて修復する中でできるものです。形成層の中でカルスは生成され周りから巻き込むように損傷部位を包み込んでいきます。そこにはオーキシンの作用があり、上から降りてきたオーキシンが損傷部位で蓄積され修復を始めます。ですので樹勢が良く修復能力が高い植物はオーキシンの流れがいい植物とも言えます。

多量は有害

オーキシンは植物体を元気に保つうえで大事な植物ホルモンだということは間違いないのですが、取り込む量が多すぎると有害なものとなります。

オーキシンは人工で合成できます。その使い道の一つとしては『除草剤』です。一見、オーキシンを与えた雑草は元気になりそうですよね?少量だとそうなんですが、多量に与えると成長阻害となってしまい植物は枯れてしまいます。

例えに出していいものかと思いましたが歴史と関連付けたものでお話しすると、ベトナム戦争での『枯葉作戦』に使われたのがオーキシンの除草剤でした。森を一気に枯らすためにヘリコプターで散布されました。二次被害としてダイオキシンなどが発生し多くの奇形児が産まれる原因となりました。

なのでオーキシンの成分は世界的にあまりよく思われていなかったのですが、近年では正しい知識によりバイオテクノロジーの分野などで研究に不可欠なものとして活用されています。

サイトカイニン

サイトカイニンは細胞分裂や側枝の成長または葉の老化防止などに関わる植物ホルモンです。どこにというか植物全体に色々と役割を持ちます。クラスで例えると縁の下の力持ちである副委員長みたいな感じです。至る所に顔を出してサポートし、時にはリーダーシップを発揮する子ですかね。

私もそんな人になりたかったです(笑)。それではその働きを見ていきましょう。

根を張らせることは…

サイトカイニンの生成は根の先端で行われます。その後茎へとつたわり上部に移行し生長点の発育、側枝の発達、花芽分化、肥大促進など多くの働きに関与しています。よく『植物は根の張りが大事だ!』それが土台となると言う方がいます。それは本当のことであり大切なことです。ただ、それをもっと詳しく言うと根をたくさん分化させ、多くの根の先端を作ることでより多くのサイトカイニンをえられます。それによって植物が健全に保たれるというのが化学的な事実です。

先程のオーキシンの説明でオーキシンは根の発根に作用していると言いました。ここで関連付けれるのはオーキシンの作用で発根が広がり多くのサイトカイニンが生成され樹の充実を図れるということです。この2つの植物ホルモンはよく関連付けられるのでセットで覚えると理解しやすいです。

側枝の形成

サイトカイニンは側枝の出芽・成長を促進する植物ホルモンです。側枝とは植物が成長すると同時に光を求めて上へ上へと芽を伸ばす過程で、葉が増えるとともに茎と葉の間から出る芽のことです。オーキシンのところで『頂芽優勢』の説明をしましたが、とても深く関係しているのでここでも取り上げさせてもらいます。

植物は生きるために光の当たりやすい上へ上へと芽を伸ばし、頂芽ではオーキシンが生成され下へ降りて発根にも作用し、植物体に栄養がいきやすくなり、さらに上へと伸びていくのが頂芽優勢における作用でしたね。その中で初めのころは側枝はほとんど出てくることはありません。頂芽に栄養が偏るため側枝は休眠状態となっているんです。その間サイトカイニンは分泌されていないわけではなく、オーキシンによって抑制されている状態となっています。ある程度成長すると側枝も出てくるようになります。

では一気に側枝が出るタイミングはいつなのでしょうか?それは頂芽が失われた時です。それは何かしらのアクシデントで折れてしまった時や仕立ての技術で、ある程度成長したら頂芽を摘心するのもその1つです。頂芽が失われた植物は一時的にオーキシンの分泌量が減少します。すると抑制されていたサイトカイニンが動き出し一気に側枝を発育させます。

ですが植物は生きるために第二の頂芽を作り出します。それが頂芽の下から伸びた側枝となります。そこからまたオーキシンが生成され植物は再び頂芽優勢の過程へと戻るのです。サイトカイニンは縁の下の力持ちみたいなものです。

葉の老化防止

サイトカイニンは葉の老化防止にも深く関係しています。葉が老化しないということは、それだけ光合成ができる葉が持続できるということです。光合成を行い養分を作り出せる成熟した葉を『ソース』と言います。逆に、その養分を取り込んで成長する葉を『シンク』と言います。シンクは後にソースとなります。

その調整機能を担っているのがサイトカイニンとなります。また、養分はサイトカイニンに集まりやすいというデータがあります。ですのでシンクには特にサイトカイニンが豊富に作用しています。これがサイトカイニン特有の細胞分裂や側枝の成長(新葉・新芽の成長)に繋がっていると思います。

ジベレリン

ジベレリンの用途は多岐にわたります。栄養成長や生殖成長、種子の発芽や花芽の形成、花粉の受精抑制や子房の肥大など使い方によっては真逆の作用となることもあります。クラスで例えると良きも悪きも素直で、接し方次第で頼もしい味方となる子です(笑)。それではその働きを見ていきましょう。

休眠打破

ジベレリンは種子の発芽に深く関係しています。種子の発芽は例外を除いて、水・酸素・温度の3つが条件となります。間違われやすいのは『光』が発芽の条件に入っていないということです。逆に発芽に光を要するものは数少ないです。

さて話を戻すと、条件が整い種子が発芽を始めるときに種子内にある『胚乳』でデンプンの分解が始まります。デンプンはエネルギーの塊であり、これを分解することで発芽のエネルギーを確保しています。その分解に関わる酵素のサポートとしてジベレリンが大きく関与しています。

栄養成長と生殖成長の促進

ジベレリンは使う時期によって植物体を大きくする栄養成長や実を肥大・成熟させる生殖成長のどちらにも作用することができます。栄養成長に大きく関与する植物ホルモンはオーキシンですがジベレリンはオーキシンを助長する効果があります。また、生殖成長で言うと『春化』といって植物体が寒い時期を一時的に過ごすことによって開花や新葉がされるという作用があります。ですが、寒い時期がない場合はジベレリンによって同じ作用を促すことができます。

ここからは具体的に植物に対する使い方を少しご紹介します。私がみかんを栽培していることもあり、みかんを例にしたいと思います。

5月の花の時期にジベレリンを使用すると生理落下の防止となります。オーキシンのサポートで新梢を伸ばし、強くして花持ちが強くなるためです。これは、ジベレリンには今の形を保とうとする作用があります。それを花の時期に栄養成長を刺激することで花を落ちにくくするということに活用しているわけです。晩生品種の収穫2か月前の着色初めには、早めに散布すれば成長を遅らせて着色を遅らせることができ、遅く散布すれば逆に、成長速度をあげて着色促進の効果があります。これは時期によって栄養成長と生殖成長のどちらに傾くかということになります。また、収穫後の12月末に散布すると来年の花芽を減少させるなど使い方は様々です。

花粉破壊と子房肥大

これも分かりやすく具体的な植物をご紹介しながら説明しようと思います。ジベレリンと言ったら皆さんが1番知っているのは『ぶどう』ではないでしょうか。ぶどうにジベレリンを使用すると種なしぶどうができます。種なしぶどうは品種ではなくジベレリン処理によるものなんですよね。

基本的に種なしぶどうはぶどうが小さい頃に2回ジベレリン処理を行うことで作られます。1回目の処理に花粉を破壊し受精できなくして種を持たない実を作り、2回目の処理で子房を肥大させます。こうして受粉しないで子房だけが発達して無種子の果実ができる現象を『単為結実』と言います。

自然界で言えば遺伝ができない奇形果実となりますが、人が商品価値をつけるために人工的に起こすこともできるのです。

エチレン

エチレンは実を熟れさせたり、葉の老化を促進させる作用がある植物ホルモンです。植物ホルモンの中でも唯一『ガス』の植物ホルモンです。クラスで例えると少し大人びてお色気ムンムンの子でしょうか。もちろん周りへの影響も絶大です(笑)。それではその働きを見ていきましょう。

果実の成熟

果実の中には成熟するものとしないものがあります。成熟するもので言うとリンゴ、マンゴー、バナナ、トマトなどです。しないもので言うとみかん、ぶどう、イチゴなどです。

ここで余談ですが金八先生で『お前は腐ったみかんだ!クラスの中にお前がいると皆が腐る!』というあの名言、植物ホルモン的にはちょっと違うんです。みかんはエチレンはほぼ出ないため周りを腐らせるのはみかんじゃなくてリンゴとかなんです(笑)。実を言うと私も学生の頃、先生に言われたことがあります。その時は私もまだ知識がなかったのでそれを否定することができませんでした。まぁその前にまともな学校生活送れよって話なんですけどね(^^)v

話しが脱線しましたが、要はエチレンは実を成熟させるガスだということです。ちなみにエチレンガスと言えば、バナナは海外からの輸入品がほとんどであり輸入規制の問題で青いものでしか輸入できないようになっています。輸入後にエチレンガスで成熟させ色をつけて出荷されています。

離層形成

離層形成の促進とはつまり葉の老化作用を促進するということです。場所で言うと枝と葉の境目のところです。これもエチレンならではの『熟れる』ということに繋がってくるのですが、葉さえも熟して落葉させてしまいます。それが冬前の休眠に入る合図である落葉ということになります。

またエチレンは細胞の伸長成長の抑制にも関与しています。簡単に言うと植物が上へ伸びる力が抑制され横に肥大する力へと変わることです。なんか熟してるっぽいですよね(笑)。

とにかくエチレンは全てを熟すと覚えておきましょう。

アブシシン酸

アブシシン酸は他の植物ホルモンと少し勝手が違います。覚え方はすごく簡単『危ない指針をだすアブシシン酸』と覚えましょう。名前がそのまんまで助かりますね(^^)vクラスで言うと元気な奴が無茶しようとしたり危ないことをしそうになったら、『大丈夫?』、『ダメだよ!』と言ってくれるしっかり者の子です(笑)。それではその働きを見ていきましょう。

種子の発芽抑制

ジベレリンのところで述べたように種子の発芽は条件が揃うことによって発芽が始まると説明しました。ですが、条件を満たしたとしても、そこに『待った!』をかけるのがアブシシン酸となります。アブシシン酸は発芽して地上に出た後の環境をも気がけていて、乾燥などで外の環境が発芽した植物にとって生存が厳しい場合『今発芽したらあぶないよー。』と言っているのかどうかは分かりませんが発芽を抑制する作用があります。

また発芽前の種子の休眠にも関わっていて、アブシシン酸の量が減ると発芽しやすくなります。『今はいいよー。』ということなんでしょうね(笑)。

生命の維持

とにかくアブシシン酸は環境が変化しても生命の維持をするために、あらゆるところに作用しています。例えば、側枝の抑制にも関わっており、これはサイトカイニンがオーキシンによって抑制されていると説明しましたがアブシシン酸も関わっています。まだ植物体が大きくない時や暑かったり、寒い時に側枝が出てダメージを受ける場所が多くなるのは植物にとって好ましくないですよね。この時にはアブシシン酸は生命の維持のために側枝を出さないという選択をします。

また土壌の乾燥や塩害などで植物が水分を吸い上げにくくなったなった場合は気孔を閉じて蒸散を抑制するのにも関わっています。他にも葉の老化を防いだりと生命を維持するための様々な作用に関与しています。

ブラシノステロイド

ここからはおまけ程度でご紹介させて頂きます。ブラシノステロイドは細胞の伸長成長を促進する植物ホルモンです。主にオーキシンがその役割を担い、ジベレリンがそのサポートをします。そこにくっつく形でブラシノステロイドも作用しています。

ジャスモン酸

ジャスモン酸は害虫や病原菌に浸食された時に放出される植物ホルモンです。例えば葉が侵食されると植物に危険信号を伝える作用があります。またそれ以上被害が拡大しないように、ジャスモン酸の作用により自ら葉を落とし植物から切り離して侵食を広げないようにするといった作用もあります。

まとめ

今の時代、知識と技術があれば必須元素をうまく組み合わせて植物に取り込ませることにより植物のポテンシャルを最大限引き出せるようになりました。ですが植物は人間が生まれる何億年も前から存在していたものであり、そこには肥料を与えるとか調整するという外的要因のない時代から生存していたものです。

その時代から植物を支えていたものは『植物ホルモン』なんです。ご紹介した全ての植物ホルモンはもちろんですが植物内で生成されています。人の心臓が動くように、食べ物を消化するように、血液が全身を回るように、植物も生きるために自ら植物ホルモンを生成し発芽から葉・茎の成長、実の肥大、種子形成へと生き続け子孫を残しています。言わば『本能』のようなものだと思います。植物ホルモンを理解することは植物の歴史を知ることにもなりますので、是非学んで農業に活かしていきましょう(^^)v

質問や感想がございましたら是非コメント欄へよろしくお願いします。

それでは、また。


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