はだ農園

針尾汐風みかん



植物の必須元素を理解して農業に活かそう ~肥料三要素(窒素・リン酸・カリウム)編~

こんにちは、はだ農園です。

4月の異常な暑さはどこへやら長崎では5月に入り温度が落ち着いてきました。夜は少し肌寒く感じる日もあるぐらいです。

さて今回は肥料三要素の窒素・リン酸・カリウムについてお話ししようかなと思います。このテーマも前々回の『光合成』と同様に深く知ろうと思えばとても深いテーマになるのでなかなか難しい内容となります。

深すぎたら私も把握しきれていない部分があるので(すいません…。)今回はそれぞれが植物に与える基本的な影響と少し深いところにいって植物内で形成される物質にどう関わっているのかをご紹介できたらなと思っています。

植物内で起こっていることは人の体内で起こっていることも多くありますのでそうやって見ていただけると少し興味が湧いて内容が理解しやすいかもしれませんね(^^)v

それでは参りましょう。

窒素

窒素は空気中にある元素でおよそ80%を占めています。無味無臭で色もついていないためにそれに気づくことはありません。植物が窒素を取り入れる過程は土壌の中で根からの吸収になります。

植物体の構成は窒素がメインで作られており必須元素の中でも最も植物が消費するものと言っていいでしょう。窒素肥料は『葉肥え』とも言われ枝や葉を大きく成長させるのに重要なものとなっています。

窒素の役割を少し細かく見ていきましょう。

アミノ酸の原料

窒素だけでアミノ酸を作れるわけではないですが、アミノ酸を作るうえで大きな役割を果たしています。

植物の根は土壌中にある窒素をすぐに吸い上げることができません。土壌中の大部分の窒素は『アンモニア態窒素』として存在します。それが微生物により『硝酸態窒素』となって根から吸収できる状態となります。例外として豆類の根はアンモニア態窒素の状態でも吸収できます。

化学肥料が効き目が早いのは硝酸態窒素がメインの窒素だからです。効き目が早いが長持ちはしないとはそういうことです。逆に有機肥料はアンモニア態窒素のため分解の工程があるので効き目が遅いですが持続力があります。

話を戻すと根から植物内へ入った硝酸態窒素はリン酸(P)の作用でアンモニア(NH₄⁺)へと変成されます。この過程でうまくリン酸が作用しない(不足している)と『硝酸塩』として植物内に蓄積されます。怖がらせるつもりはないですが硝酸塩は人体を害す発がん性物質でもあります。ですので過剰な窒素供給やリン酸の不足は避けたいところです。

変成されたアンモニアは光合成で生成されたグルコース(ブドウ糖)と合成し『アミノ酸』となります。この時、カリウム(K)が大きく作用します。

こうしてアミノ酸が生成されます。アミノ酸は植物の成長にもそうですが特に品質や食味に大きな影響を与えます。その話はまた今度ゆっくりと(^^)v

たんぱく質の形成

アミノ酸の続きの話しになるのですが、窒素をもとに作られたアミノ酸はアミノ酸同士で連結して『たんぱく質』となります。たんぱく質は植物の形そのものを維持するものであり、新芽や花を形成するものでもあります。また、たんぱく質とマグネシウムによって『葉緑素』が形成されます。

葉緑素(クロロフィル)とは葉緑体の中にあり光合成で光エネルギーを吸収する重要なところです。もともとあるものではなく窒素からの流れで作られるものなんですよね。窒素をうまく供給できないと光合成が滞るということです。しっかり覚えておきましょう。

人と植物の体内では意外と多くの共通点があります。それは生きるというという共通の目的があるからだと思います。ただその中でもたんぱく質の摂取に関しては全く違う過程を経ています。人は食べることでたんぱく質を摂取し、それを分解してアミノ酸を得ています。植物は食べるということができないので体内でアミノ酸を生成し、そこからたんぱく質を合成し吸収しています。

影響が出やすい

必須元素の中でも窒素は植物に最も影響を与えやすい元素です。リン酸やカリウムのように許容量の幅は広くありません。多くても少なくても植物に影響が出やすく、それは外観からはっきり分かるほどです。

比較的安価で与えやすい窒素ですが影響が出やすいのでコントロールはとても難しいです。特に有機物の窒素は微生物の分解をへて吸収となるので、その長い過程での土壌中の窒素含有量を推察するのは至難の業となります。

良くも悪くも見た目で判断しやすい窒素ですのでしっかりとした知識を持てば逆に安心材料となるということですね(^^)v

窒素過剰

窒素過剰は見た目に出やすいです。葉・茎の色が濃くなり、大きくなります。見た目は元気そうに見えるんですが樹勢が強すぎて花や実がつきにくくなります。まぁイメージしやすいのが青々とした観賞用の木みたいな感じです。

また、窒素が過剰に供給されると窒素を必要とする物質の合成が異常に高まり多くのエネルギー(ATP)が消費されます。結果、偏りが生じて他のところにエネルギーが回らなくなります。

例えば、窒素過剰では病害虫に侵されやすくなります。これはエネルギーの偏りで細胞壁の形成が手薄になり病害虫の侵入を招いてしまうからです。

このように見た目には強く見える窒素過剰ですが中はスカスカの状態となります。

窒素不足

窒素だけが不足という感じで症状が出るわけではないんでしょうが、葉が黄緑というか薄くなります。症状は下葉から現れ、葉が黄化してきます。窒素は比重が軽いため先端部で不足すると上へ上へと移動します。そのため下葉から影響が出やすいです。

そして重要な物質(アミノ酸、たんぱく質、核酸)の生成が鈍り、結果的に光合成に大きな影響を与え生育が衰えます。

リン酸

リン酸は『花肥』・『実肥』とも言われ果菜類、果樹類にとっては特に重要な元素となっています。その理由として新芽(生長点)や開花・結実には多くのエネルギーを使います。さんざん話してきましたがエネルギーとリン酸は深く関わっています。花が開いたり実が大きくなるのは外部から見ても分かりやすい過程です。一体どれほどの大量のエネルギーを消費しているんだろうかと思います。

リン酸の役割を少し細かく見ていきましょう。

ATP

光合成についてお話ししたブログで『ATP』は植物内で多くの物質が生成、合成されるのに消費されるエネルギーだと説明しました。そのため植物内には消費された後の『ADP』も多く蓄積されています。それを再びATPに戻すために『P』の補充が必要不可欠となります。

ATPは増えたり減ったりするのでお金に例えて『エネルギー通貨』とも言われることも前のブログでお話しさせてもらいました。肥料や葉面散布で『P』を与えることは、お金で例えると原料であるアルミや銅を用意するということです。

効きにくい

リン酸の最大の欠点は『効きづらい!』ということです。環境にもよりますが施肥した7割は効かないと思っていいでしょう。ですのではだ農園では目標リン酸の3倍の施肥量と葉面散布で補っています。

でもリン酸全てが効きづらいというわけではなく、リン酸の中でも使い分けることは可能です。

例えば『水溶性リン酸』は先程述べた通り効きにくいリン酸です。土壌中に溶け出しやすく即効性には優れてはいるのですが、金属類(アルミニウム、鉄)と結合しやすく吸収率は非常に悪いです。金属類と結合し土壌中に残るリン酸を『難溶性リン酸』と言います。

逆に『く溶性リン酸』は酸で溶けて効率よく吸収される設計で作られています。根の先端から出る根酸により溶けだして植物内に吸収されます。ただ、過程に時間がかかるため効き始めるのに時間がかかる傾向があります。有機物のリン酸の効き目が遅いのはこのためです。

『可溶性リン酸』は上2つの間のものだと思っていただいていいです。

水溶性リン酸でも効き目を上げる方法としては土壌中に堆肥などの有機物を入れ『腐植酸』によって金属類の結合を軽減させることができます。ただ、リン酸は効きにくいという前提は覚えておいた方がいいでしょう。ですので葉面散布での上からの吸収も大事になってきます。

核酸

核酸である『DNA』や『RNA』はリン酸を最も多く含む物質です。DNAは遺伝子を受け継ぐのに重要な物質ですが同時にリン酸の貯蔵施設でもあります。植物内でリン酸が不足または、実に転移するために大量に消費する段階で核酸は分解しリン酸を放出します。植物は生きるため、子孫を残すためにうまくリン酸を利用しているのです。

リン酸過剰

リン酸の過剰で植物に影響が出ることはあまりありません。敷いて言うなら複合的な理由で金属類と結合しやすいことから鉄・亜鉛・銅の欠乏を招く恐れがあります。

リン酸不足

結論から言うと『エネルギー不足』です。そのため植物の生命維持や子孫を残すための樹の成長や開花・結実などの工程が滞り、植物のバランスが大きく崩れることになります。人で言うところの『カロリー不足』です。何をするにしてもエネルギーを使うということですね。

カリウム

三大要素の1つであるカリウムですが窒素やリン酸と比べると疎かにしがちです。実際カリウムは植物体の構成物質には入っていませんし、エネルギー源というわけでもありません。しかし、カリウムこそが大事だという人もいるように植物に大きな影響を与えるからこそ三大要素に入っているのです。

カリウムの役割を少し細かく見ていきましょう。

根の浸透圧

カリウムは『根肥え』とも言われ根の発達に大きく関わっています。根の吸収は『浸透圧』を利用することによって行われています。浸透圧とは濃度を一定に保つために『半透膜』(水分だけを通す膜)を境に、濃度が低い方から濃度が高い方へと水分が移動することです。

植物の根ではカリウムが根のイオン濃度を調整し、水のみを透過させる膜の外(土壌)からイオン濃度の低い水とともに養分を吸い上げる仕組みとなっています。

調節機能

カリウムは植物内の多くの調節機能としても大きな役割を果たしています。気孔の開閉や暑い時、寒い時の温度調節または病害虫の抵抗性など様々な調節機能にカリウムは必要不可欠なものです。

ですので、植物が成長して芽や実が増えると同時にカリウムの消費も多くなっていきます。植物後期での消費量は植物体を構成している窒素(N)と同程度かそれ以上となってくるので、いかにカリウムが大事か分かると思います。

酵素の補助

カリウムは植物内にある多くの酵素の活性化に役立っています。その数は60種類以上とも言われ、呼吸や光合成の過程で作用する酵素にも深く関わっています。

また、植物内では化合や分解を繰り返して植物に必要な多くの物質を作り出しています。それにもカリウムは深い関わりがあり、カリウムなしでは多くの物質の循環が活発に回らなくなり植物に大きな影響が出てしまいます。

カリウム過剰

カリウムは土壌栽培では基本的に過剰の症状は出にくいです。それは土壌中にあるカリウムは3種類に分けられ根が吸収できる『水溶性カリウム』、その前段階の『交換性カリウム』さらにその前段階の『非交換性カリウム』とがあります。

非交換性カリウムは鉱物であり根に吸収されるまでにかなりの時間がかかります。なので肥料や葉面散布で与えるカリの量を基準として考えていいでしょう。

敷いて過剰の症状を言うならばカリウムはカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)と拮抗作用があるので、カリウム過剰の場合にはカルシウム欠乏またはマグネシウム欠乏が出ます。また窒素過剰とも似ているので判断は複合的に見て推察しましょう。

カリウム欠乏

根で言うと伸長が鈍くなったり吸水が悪くなります。そのため呼吸・光合成の作用が衰え、植物全体に影響が出ます。

また植物内の調節機能が低下し植物の弱体化に繋がります。酵素をサポートする力も弱くなり植物内での化合・分解などの循環も悪くなります。

症状としては下葉から出ます。黄化したり、茶色い斑点ができたりして最悪の場合壊死することもあります。カリウム不足は生育にカリウムが足りていないか、窒素、リン酸の過剰によりカリウムの消費が激しい時に起こりやすいです。

まとめ

やはり肥料の三大要素と言うだけあってどれをとっても欠かすことはできないですね。1番分かって頂きたいのは、三大要素全てが光合成の促進に深く関わっていると言うことです。ですので光合成を理解することは必須元素を理解する近道となります。

三大要素がいくら重要なものだとしても使用する量を間違えると毒になりかねません。要は『バランス』なんだと思います。どれかが突出してもダメですし、どれかが足りなくてもダメなんです。絶妙なバランスで植物に作用させることが大事なことだと思います。まぁこれができれば苦労しないんですけどね(笑)。そのためには日々観察し、推察することです。

勉強して結論を出しても間違っているかもしれません。行動に移しても失敗するかもしれません。ですが植物は言葉で会話ができないので、こちらが一方的に理解して歩み寄るしかありません。赤ちゃんを育てるように愛情をもって根気強く接していきたいですね(^^)v

質問や感想がございましたら是非コメント欄へよろしくお願いします。

それでは、また。